スマホからの「いますぐ」の通知、慌てなくて大丈夫──「すぐ決める」のをやめてみる
2026年9月24日
夕食を終えて、いつものようにソファでひと息ついていたときのことです。
手にしたスマホの画面に、見たことのない赤い文字が画面いっぱいにあらわれました。
「このままではパスワードが使えなくなります。いますぐこちらを押してください」
よくわからないけれど、早く押さないと大変なことが起こってしまいそうに思えます。
胸がドキドキして、スマホを持つ手が少し震えてしまう──
そんな経験をされたことはありませんか。
思い返してみると、私たちの暮らしには、このような「早く、早く」と急かされる場面がたいへん多いのです。
なぜ私たちは、いつも「早く」と急かされるのでしょう

たとえば、レジで財布の中から小銭を探しているときのこと。後ろには長い列ができています。
「後ろの人に迷惑がかかるから、早くしなきゃ」と思うけれど、ぴったりの硬貨が見つからない。
だんだん胸がドキドキしてきます。焦って手がすべって、床にジャラジャラと小銭を落としてしまった。
ほかにも、夕食の支度中に電話が鳴って、コンロの火を止めてあわてて出てみたら、聞いたこともない会社からのお誘いだった。
またあるときは、スマホの画面がピロンと鳴って「本日限定です」といった文字が目に飛び込んでくる。
きっと、このような経験は、誰にでも一度や二度はあるのではないでしょうか。

便利な世の中になったはずなのに、いつも急かされてばかりで、息が苦しくなりそうに思えます。
そう思ってしまう理由は、世の中が「すぐに返事をもらうこと」で、うまく回るような仕組みになっているからです。
私たちの中では、相手を待たせないことや、すぐに行動することが、よいことだとされていますよね。
けれど、本当にそうなのでしょうか。
実は、私たちの暮らしの中で「いますぐ」やる必要があることは、ほんの一握りしかありません。
ほとんどのことは、少し待っても、あとまわしにしてもなんの問題もないのです。
そうは思っても、急かされたら胸がザワッとしますよね。
そんなときにやってみて欲しいのが、お茶を一杯いれるという「ひと手間」です。
胸がザワッとしたときこそ、お茶を一杯いれる

たとえば、さきほどのようにスマホの画面にドキッとしたときは、まずスマホをそっと伏せてテーブルに置いてみましょう。
そして台所に向かって、やかんに水を入れて、火にかけてみる。
急須に茶葉を入れて、お湯をいれたら少し待つ。お気に入りの湯のみに、お茶をそそぐ。
あたたかいお茶の湯気を見つめながら、ふうっと深呼吸してみる。
きっと、少しだけ肩の力が抜けてくることに気づくはずです。
こんなときに、のんびりお茶をいれなくてもいいのでは、と思うかもしれません。
実は、心が焦っているときほど、お茶をいれるといった「からだを動かしてつくるひと呼吸」がよく効くのです。

人は焦ったり、びっくりしたりすると、目の前のことにだけ意識が向いてしまいがちになります。
そうなると「落ち着かなくちゃ」と冷静になろうとしても、なかなか難しいものです。
そんな「あわてんぼう」になった心には、お茶をいれるといった、いつもどおりの、少し手間のかかる行動が一番の薬になります。
「からだを動かしてつくるひと呼吸」は、お茶をいれること以外でも大丈夫です。
庭の草花にお水をあげてみるのもすてきですね。一度立ち上がって、部屋の空気を入れ替えてみるのもいいでしょう。

おどろいてドキドキしていた心も、うそのようにおだやかなリズムを取り戻してくれます。
「いますぐやらなくても、いいのかもしれない」と落ち着いて考えられるようになっているはずです。
あなたの時間は、あなただけのものです。
「いますぐ」と急かしてくる相手のペースに巻き込まれなくても大丈夫ですよ。
「あとで考える」は、とても立派な選択肢

「いますぐ決めない」ことは、とても賢い知恵ともいえます。
たとえば「本日だけの特別価格です、今買わないと損をしますよ」と言われたとします。
あるいは、スマホに「先着◯名様、今すぐ登録を」というメールが届いたとします。
なんだか、すぐ決めないと、もったいないことをしてしまう気がしますね。
そんなときには「あとで考えよう」という言葉を、心の手帳に書き込んでおいてほしいのです。
「今日は疲れているから、明日の朝に考えよう」「とりあえず一晩、寝かせてみよう」
そうやって、あえて「すぐ決める」ことをやめてみる。

不思議なもので、一晩ぐっすり眠ってから思い返してみると「昨日はどうして、こんなに焦っていたのかしら」と思うことがよくあります。
「いますぐ」と言われて魅力的に見えていたものが、後から思い返すと、実はそれほど必要のないものだった、ということも多いです。
もし本当にあなたにとって大切なお話や良いご縁であれば、一日二日待ったくらいで逃げたりしません。
逆に、急かしてくるものは、たいていの場合、あなたが冷静に考える時間をもつと都合が悪いのです。

決断を先延ばしにすることは、決して逃げではありません。
もし「パッと決められない自分が恥ずかしい」とご自身のことを思っているとしたら、それは大きな勘違いです。
その「慎重さ」は、あなたが人生の中でたくさんのことを経験し、乗り越えてきたからこそ身に付いた、すばらしい宝物です。

すぐに決めず、あとで考えるのは、少し面倒かもしれません。
でも、その面倒が、おだやかな暮らしを支える柱になります。
急かされても、ひと呼吸置いて、自分自身のペースを取り戻す。
そんな「余計なひと手間」が、あなたの日々を守ってくれます。
そして「あとで考える」ができたときは、迷って立ち止まれた自分を、どうか褒めてあげてくださいね。
あなたの時間は、誰のものでもない、あなただけのものなのですから。
次回は、「面倒くさい」を楽しむお話です。
この連載について
この記事は、書籍『「余計なひと手間」が、あなたの日々を守る──心おだやかに暮らす5つのコツ』(Kindle/ペーパーバック)の内容をもとにお届けしています。
筆者:安藤正明(社会福祉士)。介護・生活支援の現場に12年。仙台市でシニア向けデジタルサポートサロン「でじすけ」を運営しています。
