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一人暮らしの高齢者のお金の管理はどうすればよい?認知症に備えて準備を

2024年2月22日

一人暮らしの高齢者が認知症になると、お金や通帳をなくさずに管理できるか悪徳商法に騙されないかなど、離れて暮らす家族として心配事が多くなります。認知症で判断力や記憶力が低下すると、訪問販売で不要なものを買わされたり、同じ物を買い込んだりしてしまうおそれがあります。

一人暮らしの高齢者のお金の管理方法は、社会福祉協議会の「日常生活自立支援事業」や、家族が行う「家族信託」などが代表的です。

この記事では、認知症の症状が出始めると起こるお金のトラブルや、高齢者の金銭管理の方法をわかりやすく解説します。高齢の親と離れて暮らしていて、親の認知症に備えて、お金の管理方法を把握しておきたい方は、ぜひ参考にしてください。

なお、この記事を解説するSOCIARAS(ソーシャラス)は、岩手県奥州市で訪問型見守りサービスや生活支援サービスを通して、高齢者の住み慣れた地元での生活をサポートしています

奥州市に一人暮らしの親御さまがいるご家族の方、親御さまのお金の管理に不安がある方は、買い物代行や支払い代行サービスもありますので、お電話やメールフォームからお気軽にご相談ください。

認知症の症状が出始めると起こるお金のトラブル

一人暮らしの高齢者に認知症の症状が出始めると、以下のようなお金のトラブルが起こる可能性があります。

  • 適切な金銭管理ができなくなる
  • 悪徳商法・特殊詐欺に遭う
  • お金を盗られたと思い込む
  • 口座が凍結され、お金を引き出せなくなる

それぞれ詳しく解説します。

適切な金銭管理ができなくなる

家計を管理するには、決められた予算内で食費や光熱費、家賃、趣味にかかるお金などをまかなわなければなりません。しかし、認知症になると計画力や計算力、記憶力が低下し、お金のやりくりが難しくなり、以下のような行動をしてしまうことがあります。

  • 口座引き落としになっている家賃のことを忘れて、支給された年金をすべて引き出す
  • 買ったことを忘れて、同じものを何個も購入する
  • 財布や通帳、印鑑をなくす

また、認知症は判断力の低下に加え、衝動を抑えられなくなる症状もあるため、気に入ったものがあると高額でも買ってしまう「衝動買い」を抑えられない方も多いです。

不要なものは返品やクーリングオフできる場合もありますが、高齢者本人がお金の管理ができなくなったことを認めたがらず、必要だと言い張るケースも考えられます。

悪徳商法・特殊詐欺に遭う

悪質な業者は、お金や健康、孤独に不安のある高齢者を標的にし、言葉巧みに不安をあおり、親切な風を装って信用させます。高齢者は騙された自覚がなく、家族や周囲の人が気づいたときには大切な財産が根こそぎ奪い取られているおそれもあるのです。

また、高齢者は自宅にいることが多いため、訪問販売や電話勧誘の被害に遭いやすい特徴があります。認知症で理解力や判断力が低下していることにつけ込んで、高額商品の購入を迫られるケースが後を絶ちません。

特殊詐欺は、オレオレ詐欺架空請求還付金詐欺などが代表的で、巧みな手段で判断力の弱った高齢者を標的にしています。家族が同居していれば異変に気づきやすいですが、一人暮らしの場合は頻繁に連絡を取って様子を確認することが必要です。

お金を盗られたと思い込む

認知症を発症すると、財布やお金、通帳などを盗まれたと思い込む「物盗られ妄想」の症状が出る方が多くいます。自分が財布を置き忘れていても、記憶障害で置き忘れたことを忘れ、手元に財布がない状況だけを見て「娘/息子/ヘルパーが盗った」と思い込んでしまうのです。

物盗られ妄想は、記憶障害や認知機能の低下により、次第に思うように行動できなくなっていく不安や不満から起こるのではないかといわれています。

認知症の症状が出始めたからといって、高齢者からお金をすべて取り上げてしまうと、本人は疑心暗鬼になり、物盗られ妄想がひどくなるおそれもあります。ある程度の現金と財布は手元に残しておくようにしましょう。

口座が凍結され、お金を引き出せなくなる

銀行口座は、原則として本人以外はお金を引き出せず、さらに、口座名義人が認知症になると、銀行が本人名義の口座を凍結するケースもあります。

銀行が口座を凍結するのは、家族からの告知があった場合や、暗証番号を何度も間違えるなど、口座名義人の認知機能の低下を知った場合です。悪徳商法や特殊詐欺で財産を失うことを阻止するための措置なのですが、一度口座が凍結されてしまうと、本人でも家族でも口座からの引き出しが非常に難しくなります

介護にかかる費用に親の貯金を充てたくても、口座からお金を引き出せず、家族が立て替えなければならなくなるため、家族の家計が圧迫されるおそれがあります

一人暮らしの高齢者のお金を管理する方法5選

お金の管理を家族や専門家に任せる制度は、認知症になる前の判断能力がある段階で契約や申請をしておく必要があります。親の判断能力がしっかりしているうちに、金銭管理をする準備を始めましょう。

親のお金を管理する方法には、以下の5つが挙げられます。

  • 日常生活自立支援事業
  • 成年後見制度
  • 家族信託
  • 銀行の代理人制度
  • 生命保険会社の指定代理請求制度

一つずつ詳しく紹介します。

日常生活自立支援事業

日常生活自立支援事業は、地域の社会福祉協議会が、高齢者や障害がある方など、日常生活上の判断に不安のある方と契約し、日常的な金銭管理を支援する制度です。

社会福祉士など福祉に関する資格を持ったスタッフが自宅を訪問し、以下のようなことをお手伝いしてくれます。

  • 日常的な金銭管理(ATMからのお金の引き出し、払込票による支払いなど)
  • 通帳や印鑑、書類の預かり
  • 福祉サービスの利用手続き
  • 福祉サービスの利用料の支払い

窓口は市町村の社会福祉協議会で、利用料金は岩手県の場合、1時間1,300円ほどです。詳しくは「日常生活自立支援事業(福祉サービス利用援助事業) | 岩手県社会福祉協議会」をご覧ください。

日常生活自立支援事業は、本人が社会福祉協議会と契約する必要があるため、契約できるだけの判断能力が残っていることが利用の条件となります。

成年後見制度

成年後見制度とは、認知症や障害で判断力が低下している方の契約や手続き、金銭管理を後見人が法律的に支援する制度です。成年後見制度には、裁判所が後見人を選ぶ「法定後見制度」と、本人が後見人を選ぶ「任意後見制度」の2つがあります。

法定後見制度は本人がすでに判断能力が失われている状態で、後見人を自分で選べない場合に利用されます。法定後見制度は裁判所が後見人を選ぶため、弁護士や社会福祉士などの専門家が選ばれる場合もあり、本人の家族が後見人になれるとは限りません

任意後見制度は本人にまだ判断能力がある段階で、自ら後見人を選び、本人と後見人の間で公正証書により契約を交わします

後見人の具体的な役目は以下のとおりです。

  • 預貯金や不動産の管理
  • 年金の管理
  • 税金や公共料金の支払い
  • 介護費用や医療費の支払い

このように後見人は本人の財産の管理権限を持ち、場合によっては本人が行った契約を取り消すこともできます。

家族信託

家族信託は、本人がお金を管理できなくなるリスクに備えて、家族に財産の管理や運用を託すことができる制度です。弁護士や司法書士などの専門家に相談して、本人と家族の間で信託契約を結びます。本人の生活に必要なお金は毎月送金することで、大きな散財や詐欺被害などを防げます。

成年後見制度より利用が簡単で、本人が亡くなったあとの相続手続きがスムーズになる点がメリットです。

家族信託は、本人に判断能力があるうちに契約しておく必要があります。発症前に契約しておけば、認知症で判断能力が低下してもそのまま契約を継続可能です

銀行の代理人制度

銀行によっては、口座名義人の判断能力が低下したときに備えて、あらかじめ代理人を指定し、預金の引き出しや運用商品の売却などの手続きができるサービスがあります。

代理人に指定できる人は、口座名義人の配偶者、または二親等以内の親族と定められている場合が多く、親子や兄弟姉妹が代理人となるケースが多いです。本人の判断能力が低下したら、診断書を銀行に提出することで、代理人が取引を始められます。

ただし、銀行の代理人制度も、口座名義人に判断能力のあるうちに手続きしておかなければなりません。

生命保険会社の指定代理請求制度

生命保険会社では、被保険者本人に特別な事情がある場合に、指定代理人が保険金を請求できる「指定代理請求制度(特約)」があります。特別な事情とは、障害や疾病により保険金を請求する意思表示ができないときを指し、認知症もこれに該当します。指定代理請求制度は、入院給付金や手術給付金など、被保険者が受取人になっている給付金が対象です。

指定代理請求人に指定できる人は生命保険会社によって異なりますが、被保険者の配偶者や直系血族、被保険者と同居、または生計を一にしている三親等内の親族とされる場合が多いです。

指定代理請求制度も、判断能力がなくなってからでは利用できないため、被保険者本人に判断能力があるうちに、あらかじめ代理人を指定する特約をつけておきましょう。

一人暮らしの親の日常生活での金銭管理のポイント

認知症で親の判断能力が低下し始めたら、金銭管理においては、以下のポイントを意識することがおすすめです。

  • お金や財布を取り上げない
  • 複数の銀行口座を使い分ける
  • 家族全員で話し合う

それぞれ詳しく解説します。

お金や財布を取り上げない

「無駄遣いするといけないから」と、親からすべてのお金や財布を取り上げると、本人の自尊心を深く傷つけてしまうでしょう。認知症の兆候があったとしても、本人はまだうまく金銭管理できていると思い込んでいることも考えられます。

クレジットカードや銀行のキャッシュカードは家族が預かっても、家族への不信感を募らせないために、財布には少なめの現金を入れておくようにしましょう。

複数の銀行口座を使い分ける

銀行口座を複数持っている場合は、「普段使い用」と「管理用」に使い分けるのがおすすめです。

管理用の口座は、キャッシュカードを預かることで、本人が預金を引き出しにくくしておくとよいでしょう。普段使い用口座に、親の毎月の生活費を都度振り込むようにし、家賃や光熱費は管理用口座から引き落とすように変更しておくと、残高不足を心配する必要がなくなります。

家族全員で話し合う

親の金銭管理を家族の誰かが始めるときは、まず兄弟姉妹が集まってしっかりと話し合っておきましょう。家族の誰か一人が財産管理することで、親の資産を使い込んでいるのではないかと疑われ、トラブルになるケースもあるためです。

親の財産管理を始めるときは、まずどれくらいの財産があるのか把握し、兄弟姉妹間で共有し、介護費用などで使ったときはきちんと記録を取ることをおすすめします。言い出しにくい話題ですが、親が元気なうちに、どのような資産がどれくらいあるのか明らかにできるとベストです。

一人暮らしの高齢者のお金の管理は、元気なうちに準備しておこう

認知症の症状が出始めた高齢者は、年金を支給日に全額引き出してしまう、高価な物を衝動買いしてしまうなど、次第に金銭管理ができなくなっていきます

親と離れて暮らしている場合は、悪徳商法や特殊詐欺から守るためにも、家族信託で親の財産を管理したり、日常生活自立支援事業で社会福祉協議会に管理してもらったりする必要があるでしょう。

当社・ソーシャラスの訪問型見守りサービスは、定期的にスタッフがお宅を訪問し、親御さまの生活や健康に異変がないか見守りするサービスです。悪徳商法で不要なものを買わされている、買ったことを忘れて同じ物を買い込んでいるなどの変化にも気づき、家族にご報告いたします。

また、当社の生活支援サービスは、10分500円で「支払い代行」や「買い物代行」など、一人暮らしの高齢者の生活をサポートするさまざまなメニューをご提供しています

高齢の親御さまと離れて暮らしている方、ソーシャラスは親御さまの住み慣れた土地での一人暮らしをサポートします。お電話やメールフォームから、お気軽にご相談ください。